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KINDAI UNIVERSITY

貴重書・コレクション

常設展示

2012年

「クリスマス・ブックス」5冊

Dickens, Charles 1812-1870
A Christmas carol, in prose : being a ghost story of Christmas. London: Chapman & Hall, 1843.
The chimes : a goblin story of some bells that rang an old year out and a new year in. London: Chapman & Hall , 1845.
The cricket on the hearth : a fairy tale of home. London: Bradbury & Evans, 1846.
The battle of life : a love story. London: Bradbury & Evans, 1846.
The haunted man and the ghost's burgain.London: Bradbury & Evans, 1848.

著者 ディケンズ
出版地 ロンドン
出版年 1843-1848年

チャールズ・ディケンズ(Charles Dickens, 1812-1870)は、ヴィクトリア朝時代を代表するイギリスの小説家。『オリバー・ツイスト』、『二都物語』など多くの作品があるが、中でも『クリスマス・キャロル』を始めとするクリスマスの物語は多くの人に愛された。
クリスマスの1週間前に書き下ろし作品として、1843年から1848年にかけて、ほぼ毎年刊行された『クリスマス・キャロル』、『鐘の音』、『炉辺のこおろぎ』、『人生の戦い』、『憑かれた男』の5作品は、1852年に『クリスマス・ブックス』と題して1冊にまとめられている。また、ディケンズは1850年から1867年までクリスマスに関する20作品を執筆している。
これらの作品により、ディケンズの名とクリスマスは分かちがたいものとなっている。なお、展示作品は全て初版本である。

『昔の日本の物語』

Redesdale, Algernon Bertram Freeman-Mitford, Baron, 1837-1916
Tales of old Japan 2nd ed.
London: Macmillan, 1893.

著者 アルジャーノン・ミットフォード
出版地 ロンドン
出版年 1893年

ミットフォードは、幕末維新期に日本への赴任を命じられたイギリスの外交官。日本語をいち早くマスターし、2代目駐日イギリス公使ハリー・パークスのもと、同僚のアーネスト・サトウとともに対日外交交渉に大いに尽力した。

『昔の日本の物語』は、帰国後の1年間の休暇を利用して、日本滞在当時から書き留めていた日本の風俗風習や、「花咲かじいさん」、「ぶんぶく茶釜」、「狐の嫁入り」などの民話をまとめて、1871(明治4)年に刊行したものである。
特に、赤穂浪士の物語を西洋に初めて紹介したことで知られている。 本書は、1874年に出版された第2版の再版である。

『イエロー・ブック』

”The Yellow book : an illustrated quarterly” London : Elkin Mathews & John Lane Vol. 1 (Apr. 1894) - Vol. 13 (Apr. 1897)

出版地 ロンドン
出版年 1894年(第1-3巻)、1895年(第4巻)

『イエロー・ブック』は、1894年から1897年までイギリスで発行された季刊文芸・美術雑誌である。ヘンリー・ハーランドなどが文芸主幹を、オーブリー・ビアズリーが美術主幹をつとめ、佳品の小説・イラストなどを掲載した。印象的な黄色の表紙は、フランス小説の表紙に黄色が多かったことにちなむといわれ、デカダン(退廃)派を象徴する雑誌として脚光をあびた。

1894年は「ビアズリーの時代」と評されるほど、ビアズリーの名前が当時の一般大衆にも一躍注目されることとなった。しかし、1895年におこったワイルド猥雑事件によって、ビアズリーが5巻以降追放されたため、芸術的精彩を失った『イエロー・ブック』は、13巻で終刊となった。

1巻から4巻には、ビアズリーの表紙、イラストのほか、ビアズリー自身や寄稿作家のヘンリー・ジェイムズなどの肖像画も掲載されている。
ビアズリーは19世紀末美術を代表するイギリスの画家・文筆家で、『アーサー王の死』、オスカー・ワイルド『サロメ』の挿絵などが有名である。25歳で早世した。

Beardsley, Aubrey 1872‐1898
Harland, Henry 1861‐1905
Wilde, Oscar 1854-1900
James, Henry 1843-1916

『指紋』(初版)

Galton,Francis(1822-1911)
Finger Prints. London : Macmillan&Co., 1892

著者 ゴールトン
出版地 ロンドン
出版年 1892年

著者は、イギリスの遺伝学者。優生学の父として知られる。進化論で有名なチャールズ・ダーウィンの従兄にあたる。

優生学は、民族の遺伝的素質の向上を目的とし、優れた素質の男女の多産と、劣悪な素質の男女の結婚制限を主張する学問である。19世紀中頃のイギリスは世界の工場として繁栄し、楽観的未来観が広がっていたため、著者の優生学を支持するものは少なかった。しかし、著者は研究を続け、植物や人体の計測結果の統計から遺伝法則を計るために、回帰分析(1877年)や相関(1888年)の手法を開発し、本書で、指紋が生涯不変であり個人の識別に使えることを立証した。

彼の優生学には重大な誤りがあることはいうまでもないが、これらの統計学は、優生学とは無関係に現代の社会になくてはならないものである。

『シャーロック・ホームズの思い出』初版

Doyle, Arthur Conan, Sir (1859-1930) / Paget, Sidney (1861-1908)
The memoirs of Sherlock Holmes. London, 1894

著者 サー・アーサー・コナン・ドイル
シドニー・パジェット挿絵
出版地 ロンドン
出版年 1894年

著者はイギリスの小説家・医者。私立探偵シャーロック・ホームズの生みの親。推理小説のほかにSF小説や歴史小説、冒険小説なども書いている。

本書はシャーロック・ホームズシリーズの第二短編集で11の作品が収められている。ドイル自身は歴史作家を自認しており、ホームズの人気を重荷に感じ続け、本書の最終話「最後の冒険」で、宿敵モリアーティ教授と刺し違えた形で滝に落ちたホームズを生死不明にしてシリーズを終了した。しかし読者の熱烈な支持により再開、1927年に発表された「最後の挨拶」まで、全部で60の作品からなる世界的人気シリーズとなった。

挿絵を描いたシドニー・パジェットは、インバネス・コートに鹿打ち帽姿のホームズ像を生み出した人物と考えられており、後世の小説、映画、戯曲などの二次作品におけるホームズ解釈に多大な影響を与えた。

『摂津名所図会』(せっつめいしょずえ)

著者 秋里 籬島(あきさとりとう)編
竹原 春朝斎(たけはらしゅんちょうさい)画
出版年 寛政八(1796)年~寛政十(1798)年刊
島本文庫

摂津国(現在の大阪府北西部および兵庫県南東部の旧国名)の名所・旧跡を絵画と文章で紹介した地誌であり、現在の旅行ガイドにあたるものである。編者は、秋里舜福(籬島)。挿絵は、竹原信繁(春朝斎)を中心に、丹羽元国(桃渓)ほか七名の絵師が筆をとっている。九巻十二冊。
初刷本と後刷本の二種があり、本書は初刷本である。初刷本は、寛政八(1796)年に巻七 武庫郡・菟原郡、巻八 矢田部郡(上下二冊)、巻九 有馬郡・能勢郡の四冊が刊行され、二年後の寛政十(1798)年に巻一 住吉郡、巻二 東生郡、巻三 東生郡・西成郡、巻四 大坂部(上下二冊)、巻五 島下郡・島上郡、巻六豊島郡・河辺郡(上下二冊)の八冊が刊行された。
二百年前の大阪の風景や人々の営みが生き生きと描かれており、当時を知る上で貴重な史料と言えよう。

『北越雪譜』

写真は初編上巻より

著者 鈴木牧之撰
山東京山編
丁子屋平兵衛等刊
出版年 天保七(1836)年 初編上中下三巻、
天保十三(1842)年 二編一~四巻
島本文庫

本書は、著者の鈴木牧之(1770-1842)が、故郷の越後・塩沢の雪にまつわる風俗・習慣・伝説・言語・産業等について書き記したものである。

初編巻之上では、冒頭部分で雪の生成過程について分析し、顕微鏡で雪の結晶を観察・記録した図が掲載されている。その他、吹雪・雪崩・洪水などの自然現象、神事や風物詩、雪の中で使う道具などの挿絵も多く含まれる。

牧之は、雪と共に生きる故郷の生活を世の人々に知らせたいと思い、面識のあった山東京伝や滝沢馬琴らに出版に向けて協力を依頼したが、交渉が難航し、出版計画はなかなか進まなかった。牧之60歳の頃に、山東京山(京伝の弟)より出版協力の申し出があり、計画から数十年の時を経て、ようやく『北越雪譜』が刊行されるに至った。

『芸州厳島図会』(げいしゅういつくしまずえ)10巻 10冊

著者 岡田清編
田中芳樹校正
山野峻峯齋画図
出版年 天保十三(1842)年刊
島本文庫

本書は『厳島図会』5巻と『厳島宝物図会』5巻からなる。『厳島図会』は厳島神社(広島県宮島町)周辺を描いた名所図会で、『厳島宝物図会』では厳島神社に伝来する宝物が細部の模様に至るまで詳細に描かれている。

名所図会とは江戸時代後期に盛んに刊行された名所案内記で、写生をもとにした鳥瞰図(ちょうかんず=上空から斜めに見下ろした様子)の挿絵が多数入っていることが特徴である。京都や江戸などのほか、伊勢神宮や善光寺といった寺社仏閣を取りあげたものも数多く刊行され、庶民に大いに親しまれた。

編者の岡田清(1807-1878)は安芸広島藩士の国学者で、私塾で漢字、和学を教えたのち、東京に出て神事や陵墓の管轄を行う神祇官に一時奉職した。

展示の足跡