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KINDAI UNIVERSITY

貴重書・コレクション

常設展示

2015年

『不思議の国のアリス』

Rackham, Arthur 1867-1939 (illust.)  Carroll, Lewis, 1832-1898 Alice's adventures in Wonderland. London: William Heinemann, 1907. New York: Doubleday, Page

著者 ラッカム画 キャロル
出版地 ロンドン・ニューヨーク
出版年 1907年

アーサー・ラッカムは、20世紀初頭のイギリスを代表する水彩挿絵画家。数多くの優れた作品を残し、エドマンド・デュラック(Edmund Dulac, 1882-1953)とともに、挿絵本の黄金時代を牽引した。当時のイギリスでは、クリスマスにギフト・ブックとして古典や童話に美しい挿絵を添えた本を贈る習慣があり、クリスマス・シーズンに出版されたラッカムの豪華な挿絵本は、特に人気を博した。
『不思議の国のアリス』は、イギリスの数学者で作家のチャールズ・ラトウィッジ・ドジソンが、ルイス・キャロルのペンネームで1865年に出版した児童文学書。1907年に『不思議の国のアリス』の版権が切れると、7人もの挿絵画家がアリスの挿絵本を続々と出版したが、最も評判が高かったのがラッカムの作品であった。
ラッカムは、ドリス・ド-ミットという少女をモデルにして、カラー挿絵13点、モノクロ挿絵15点を収録した本書を制作した。装丁は、19世紀の有名な製本家ツェーンスドルフによる赤色総モロッコ革装で、1130部の限定版である。

『英語辞典』

Johnson, Samuel (1709-1784)
Johnson's dictionary of the English language. With a portrait. To which are added, a list of the cities, boroughs & market towns, in England and Wales.
London: Shepherd and Sutton, 1833

著者 ジョンソン
出版地 ロンドン
出版年 1833年

イギリスの文筆家サミュエル・ジョンソン(1709-1784) は、1755年に2,300ページを超える大著『英語辞典』を完成させた。ベーコンやミルトン、シェイクスピアなど著名な作家の作品から広範でかつ適切な例文を引用したこの辞典は、18世紀前半の英語純正運動の時代風潮に合い、大変好評を博した。初版以来長く版を重ねて広く普及し、大量の簡約版が19世紀の間に出版された。展示本は1833年に刊行された簡略版。
引用を辞書に取り入れるという手法は、後世の辞書の編纂にも大きな影響を与え、19世紀末に『オックスフォード英語辞典』(通称OED,1928年刊行)が出されるまでの長い間、権威のある辞書として絶対的な地位を維持し続けた。

『ニュートン天文学』

Ferguson, James (1710-1776)
Astronomy explained upon Sir Isaac Newton's principles, and made easy to those who have not studied mathematics.
London: James Ferguson, 1757 second edition

著者 ファーガソン
出版地 ロンドン
出版年 1757年

ジェームス・ファーガソンは、スコットランド出身のエンジニア、天文学者、講演家および芸術家である。労働者の息子として生まれた著者は、細密画を描いて生計を立てながら、大学で医学と科学を学んだ。1743年にロンドンに移住したのち、天体の観察に取り組み、天球儀を作成する。これを利用して講演を行い、当代一の講演家として名声を博した。
本書は天文学をわかりやすく説明し、世間に広く普及した天文学の教科書である。初版は1756年刊。本書は第2版で、さらに後の版では、1761年の金星の太陽面通過に関する事項が追加されている。また著者は、天文時計や”エリプサリオン“と呼ばれる日食を説明する装置も開発している。

『アントニオ・ガウディ』

Antonio Gaudi.
Rafols, Jose, 1889-1965
Barcelona: Canosa, 1929.

著者 ラフォルス
出版地 バルセロナ
出版年 1929年

ラフォルスは、スペインの建築家、美術研究家。本書は、サグラダファミリア聖堂の設計などで知られる建築家アントニオ・ガウディ(1852-1926)についての最初の研究書である。ガウディの直弟子であった著者は、ガウディについての挿話や晩年の言葉を交えて伝記を記し、巻末にはガウディ文献目録を列挙している。
1928年にカタロニア語版が、1929年にスペイン語版が刊行された。本書は、スペイン語版である。

『主のたとえ話』 [パピエ・マシェ]

Parables of our Lord..
London : Longman, Brown, Green and Longmans, 184-.

出版地 ロンドン
出版年 1840年代

本書は、新約聖書のルカ、マタイの福音書からイエス・キリストが語ったとされる放蕩息子や、良きサマリア人、種蒔く人などのたとえ話を集め、クロモリトグラフ(多色石版)で華麗に装飾された本である。装飾を行ったハンフリーズ(1810-1879)はバーミンガムの生まれで、本の挿絵画家として、特に博物学関連の本で成功した。1840年代のイギリス出版界では、主に聖書からとった文を中世風の装飾で飾ったプレゼント用の本が売り出され人気を博したが、ハンフリーズはこのような彩色された本の2大先駆者の一人であった。
装丁にも工夫が凝らされており、パピエ・マシェ(紙張り子)で作られ、中世の木製の表紙のような印象を与えている。表紙は9つの部分に分かれており、中心に種蒔く人、周りに穀物と茨が絡まっている。角にはそれぞれ4福音書の作者を象徴するマタイの天使、マルコのライオン、ルカの牛、そしてヨハネの鷲がかたどられている。中心の左右の部分は良い木と悪い木のたとえ話をあらわしており、左の良い木には実がなり、右の悪い木は根元に斧がささっている。

『日本:その建築、美術、美術工芸』

Dresser, Christopher, 1834-1904
Japan : its architecture, art, and art manufactures.
London : Longmans, Green and Co, 1882.

著者 ドレッサー
出版地 ロンドン
出版年 1882年

ドレッサーは、イギリスの植物学者、デザイナー、作家。1876年(明治9年)にイギリスから美術工芸品を携えて来日した。約4カ月の滞在中、国賓の待遇を受け、日本各地を訪問し、浅草寺、正倉院、清水寺、伊勢神宮など、歴史的に重要な建築、美術に多く触れ、工芸品の産地を視察した。

本書は、帰国後出版されたもので、日本の建築や美術を紹介しており、西洋におけるジャポニズムの流行に大きな影響を与えた。日本の建築や美術のなかで、装飾性に優れ、また構成の巧みなものを評価し、建築物としては、日光東照宮を最も評価している。

『眠り姫、その他の物語』

Dulac, Edmund, 1882-1953(illust.)
Quiller-Couch, Arthur, Sir., 1863-1944
The sleeping beauty and other fairy tales from the old French.
London: Hodder & Stoughton, 1910.
Oxford : printed at the University Press, 1857.

著者 デュラック画
キラー=クーチ再話
出版地 ロンドン
出版年 1910年

イギリスの再話(リトール)の名手アーサー・キラー=クーチ卿が選んだフランスの4つのおとぎ話集。本書は『眠り姫』のほか、『青髭』、『シンデレラ』、『美女と野獣』を30点のカラー図版とともに収録した1000部限定、天金の豪華本で、挿絵を担当したエドマンド・デュラックの署名が入っている。

デュラックは、イギリスで活躍したフランス出身の挿絵画家。アーサー・ラッカムとともに、20世紀初頭のイギリス挿絵黄金期を牽引した。色彩の美しさや、オリエンタリズムの要素をちりばめたエキゾティックな世界で、「線のラッカム、色のデュラック」と並び称されるほどラッカムと人気を二分する存在であった。

シュメールの楔形文字が刻まれた粘土板の経済文書

Example of a Sumerian cuneiform economic document.

出版地 メソポタミア
出版年 ウル第三王朝時代
紀元前2040年頃

楔形文字は紀元前3500-1700年頃に南メソポタミアで活躍したシュメール人が発明したと推定される、現在知られている最古の文字体系である。
粘土板は書き換えることが出来、天日で乾かす、もしくは窯で焼けば長期保管も可能なため広く用いられていた。現在残っている粘土板は、戦争によって保管庫が燃やされ、焼成して長く残ったものも多い。

新シュメールの楔形文字が刻まれた粘土円錐

Example of a Neo-Sumerian cuneiform dedicatory inscription written on clay in the form of a thick cone or nail.

出版年 紀元前2120年頃

新シュメールの楔形文字の例。太い円錐の粘土に刻まれた奉献文で、GudeaによるLagash統治時代のNingirsu神殿建設を祝うものである。
当時の王宮や神殿ではこのような奉献文を刻んだ粘土釘の頭を着色して壁に大量に打ち込み、モザイク画のような模様を作り出していたとされる。

古バビロニア語の楔形文字入り円筒印章

Example of an Old Babylonian cylinder seal with cuneiform inscription in Old Babylonian.

出版地 南メソポタミア
出版年 古バビロニア時代
紀元前1900-1700年頃

円筒印章とは円筒状の印鑑で、粘土に押し当てて転がせば模様や絵の陰影が転写される。封筒や容器の紐を固定する粘土に押し当てて、封印に用いていた。

右側に長い襞入りの衣を着た神が小さなコップを手に椅子に腰掛け、二人の人物を迎えている。一人は無帽で長い襞入りの衣を着、腰のあたりで両手を合わせている。もう一人も同様の衣を着て、片手を挙げている。その他に三日月、しゃがんだ猿、容器らしきもの、球体と棒を組み合わせたものが描かれている。立ち上がった犬が描かれ、その上方に2行の楔形文字で男神と女神の名が書かれている。
神の名はEaとNinegalである。Eaは地下水の男神、Ninegalは知名度は低いが女神で、その名は「神殿の夫人」を意味する。また、犬は 治癒の女神Gulaの象徴である。

フランスの写字生による時祷書の一葉

Example of Batarda script in Latin, on Vellum, from a French Book of Hours.

出版地 フランス
出版年 15世紀末-16世紀初頭

時祷書とは中世ヨーロッパで広く普及した、キリスト教における礼拝や祈祷の内容をまとめた装飾写本である。
展示品は、ラテン語でヴェラムに書かれた時祷書の一葉。18行の文章が褐色インクにより、バタルダ体で書かれている。赤と青のテンペラ地に磨かれた金による2行大の頭文字3点が目を引く。

『都名所図会』 全6巻6冊

(画像は部分)

著者 秋里籬島 著
竹原春朝斎 画
出版地 皇都(京都)
出版年 天明6(1786)年刊

本書は、多彩な観光都市である京都の名所案内記として、安永9(1780)年に出版されたものの再板である。現地取材をもとに、見開き図版を含めた名所絵250点余、紹介した名所の数は740カ所に及んでいて、版を重ねるほど人気があった。
京都を代表する神社仏閣の建物、庭、山々、川などを俯瞰的に描き、近辺の土産物屋では、店の造り、店先での客とのやりとり、格子の奥での餅付きの様子などを綿密に描き、賑わいが聞こえてくるようである。
籬島と春朝斎は、この後、『拾遺都名所図会』、『大和名所図会』、『摂津名所図会』、『東海道名所図会』などを次々に著し、名所図会のブームを作った。

展示の足跡