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KINDAI UNIVERSITY

貴重書・コレクション

常設展示

2007年

『ラッカム挿絵本』

Arthur Rackham 1867-1939,

アーサー・ラッカム(Arthur Rackham, 1867-1939)は、20世紀初頭のイギリスを代表する水彩挿絵画家。数多くの優れた作品を残し、エドマンド・デュラック(Edmund Dulac, 1882-1953)とともに、挿絵本の黄金時代を牽引した。当時のイギリスでは、クリスマスにギフト・ブックとして古典や童話に美しい挿絵を添えた本を贈る習慣があり、クリスマス・シーズンに出版されたラッカムの豪華な挿絵本は、特に人気を博した。

『ケンジントン・ガーデンのピーター・パン』
ロンドン ホダー・アンド・ストウタン社, 1906年

『不思議の国のアリス』
ロンドン ハイナマン社:ニューヨーク ダブルデイ・ページ社, 1907年

『真夏の夜の夢』
ロンドン ハイナマン社:ニューヨーク ダブルデイ・ページ社, 1908年

『装飾活字』

「Fine movable initials, "A" to "Z". 26 pieces」

制作者不明、制作年不明

活字とは、活版印刷に使う字型で、柱状の金属の一面に文字を左右反対に浮き彫りにしたものである。
装飾活字は、本文に使う書体活字とは別に、書面を美しくレイアウトするために作製されたもので、展示品は 草花の絵で精細に装飾された頭文字用の活字である。

『国民義勇軍の編成に関する講演』(校正本)

Robespierre, Maximilien, 1758-1794, 「Discours sur l'organisation des gardes nationales」

著者 ロベスピエール
出版年 1791年

 著者は、フランス革命期のジャコバン派の指導者であり、常に民衆の立場を擁護した。ルソーの影響を受け、自由な生産と交換ができる小生産者の社会を理想とし、大商工業者や大地主の支配に反対した。清廉潔白な人物であったが、粛清による恐怖政治を断行し、多くの反対派を断頭台に送った。1794年6月には「ロベスピエール独裁」は最高潮をむかえるが、翌月に起こったテルミドールのクーデターで「主権をのっとるすべての個人は、自由人によって即刻死刑に処せられる」という彼自身が制定した憲法の第十七条に従って処刑された。
1795年にすべての政治クラブの活動が禁止されると、ジャコバン派の勢力も急速に衰退したが、思想そのものは共産主義思想やロシア革命に受け継がれた。

本書は、彼が下層市民や農民の支持を得て三部会の第三身分議員に選ばれ、国民議会で議会左翼を形成したころ書かれたものらしく、各所に校正の筆が入れられているが著者自身のものか否かは不明である。

『芙萸』(ぐみ)自筆原稿

著者 室生犀星
出版年 昭和23(1948)年

室生犀星は大正、昭和時代の小説家・詩人。金沢市に生まれ、地元新聞の記者などを経て21歳で上京、北原白秋、荻原朔太郎、佐藤春夫らと知り合う。29歳のとき『愛の詩集』を発表し抒情詩人として作家活動を出発、『抒情詩集』などの作品で名声を博す。また『あにいもうと』『杏っ子』など小説家としても数々の作品をのこした。

本原稿は犀星の短編小説『芙萸』(ぐみ)の自筆原稿である。この作品は全集や作品集には収録されておらず、いつどんな状況で執筆されたのかも不明であったが、調査の結果、昭和23(1948)年7月に京都の新聞社が刊行した雑誌に掲載されたことが判明した。戦後の不遇時代の心境をうかがわせる私小説的作品である。

『戦争と平和の法』

Grotius, Hugo, 1583-1645, 「De jure belli ac pacis libri tres」

著者 グロティウス
出版地 パリ
出版年 1625年

グロティウス(1583-1645)は、「国際法の父」「自然法の父」と称されるオランダの法学者。 11歳でライデン大学に入学し、14歳で卒業。15歳で法学博士の学位をとり、16歳で弁護士になる。 その後、法務官、行政長官などの公職につく。35歳の時、神学論争をめぐる政治上の紛争に巻き 込まれ、終身禁固の刑に処せられ、ローフェスタイン城に幽閉される身となった。約2年後、妻の 手引きにより、書物運搬箱に隠れて脱出に成功し、フランスに亡命。その滞在中にラテン語で著し たのが本書である。
30年戦争(宗教戦争)の惨状に直面した著者は、戦争を「正当な戦争」と「不当な戦争」とに分け 、正当な原因に基づく正しい戦争のみが国際法により許容されるという「正戦論」を主張した。 国際法を近代自然法 (宗教や国家を超えた人間的理性に基づく普遍的な法)の原理によって初めて 体系づけた本書は、後世に大きな影響を与えた。

奈良絵本『鶴亀物語』

出版年 寛文(1661-1673)年頃写

『鶴亀物語』は、鶴と亀の導きにより不老不死の薬を授かる夫婦のおめでたい話で、祝儀物として尊ばれた。
奈良絵本とは、室町時代から江戸初期にかけて制作され、奈良絵を挿絵とし御伽草子を主な題材とした絵入り本で、 冊子本のほかに巻子本(巻き本)もある。

展示品は、見返しに布目金箔を施し、料紙には金泥で下絵を描き裏打して金切箔を散らし、挿絵にも金切箔等を用いた 極彩色の美しい豪華本で、同じく祝儀物の御伽草子『松竹物語』と一組で写された巻子本である。

展示の足跡